『不思議のダンジョン』シリーズは、日本のゲーム市場においてローグライクというジャンルを確立し、長年にわたりプレイヤーを魅了し続けてきた金字塔と言える存在です。その魅力を端的に表すキャッチコピー「1000回遊べるRPG」は、シリーズの本質を見事に捉えています。
このシリーズの歴史は、1993年にチュンソフト(現スパイク・チュンソフト)から発売された『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』に始まります。本作は、1980年代初頭に生まれたコンピューターゲーム『Rogue(ローグ)』の根幹的なゲームシステム、すなわちプレイするたびに構造が変化するダンジョンと、一度倒れるとレベルやアイテムを失う「パーマデス(永久的な死)」といった要素を、家庭用ゲーム機向けに再構築したものでした。
『Rogue』自体は、文字ベースのインターフェース(テキストユーザインタフェース)で表現されることが多かった硬派なPCゲームでした。しかし、『トルネコの大冒険』では、『ドラゴンクエストIV』の人気キャラクターであるトルネコを主人公に据え、グラフィカルな表現を採用しました。この親しみやすいキャラクターと視覚的な分かりやすさが、当時のPCゲームに馴染みの薄かった日本のコンソールゲーマーにとって、ローグライクという未知のジャンルへの入り口となり、その普及に大きく貢献したと考えられます。これは、ニッチなPCゲームジャンルを、より広範な市場へと巧みに適応させた戦略の成功例と言えるでしょう。
さらに重要なのは、シリーズ名を『トルネコの大冒険』に限定せず、『不思議のダンジョン』というブランド名を冠した点です。これにより、チュンソフトは『ドラゴンクエスト』の世界観に留まらず、完全オリジナルの世界観を持つ『不思議のダンジョン2 風来のシレン』を成功させることができました。その後も、『ポケモン不思議のダンジョン』や『チョコボの不思議なダンジョン』など、他社の人気IPとのコラボレーションも実現しています。この柔軟なブランディング戦略によって、『不思議のダンジョン』は単なる一作品の名称ではなく、日本におけるローグライクゲームの代名詞として広く認知されるジャンルブランドへと成長したのです。
※タイトル数が多いシリーズは記事を分けました。
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その他
現在作成中ですので、随時追加していきます。